デルタ関数型ポテンシャルの問題はよく出題される。
例えば令和2年度北大院試や、平成24年度東工大院試
今回はこのようなデルタ関数型ポテンシャルの処理をまとめる。
デルタ関数型ポテンシャル
ポテンシャルの形は、デルタ関数を用いて
$$V(x) = A\delta (x) \hspace{4mm}(A : {\rm const})$$
と書ける。デルタ関数は
$$\begin{align} \delta(x) = \left\{\begin{matrix}\infty &(x=0)\\ 0 & (x\neq 0)\end{matrix}\right.\end{align}$$
となる値を持つ関数である。
\(V(x) = -V_0\delta (x) \hspace{4mm}(V_0 > 0)\)の場合(束縛状態)
波動関数
シュレディンガー方程式
$$\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2} + V(x) \right)\psi(x) = E\psi(x) \tag{1}$$
まずは\(x\neq 0\)の領域で考える。このときポテンシャルは0なので、
$$-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2} \psi(x) = E\psi(x) $$
となり、これを解くと
$$\begin{align} \psi(x) = \left\{\begin{matrix}Ae^{\kappa x} +Be^{-\kappa x} &(x>0)\\ Ce^{\kappa x} +De^{-\kappa x} & (x< 0)\end{matrix}\right.\end{align}$$
が得られる。ただし\(\kappa = \frac{\sqrt{-2mE}}{\hbar}\)である。(今回束縛状態を議論するので、\(E<0\)である。)
ここで、波動関数の有界性(無限遠方で0に収束)より、\(A=D=0\)であることがわかる。また、境界条件より\(x=0\)で波動関数は連続でなければならないので
$$\begin{align} \psi(x) &= \left\{\begin{matrix} Be^{-\kappa x} &(x>0)\\ Be^{\kappa x} & (x< 0)\end{matrix}\right. \\&= Be^{-\kappa |x|}\end{align}$$
と表すことができる。
次に規格化定数\(B\)を求める。規格化条件より
$$\begin{align} \int^{\infty}_{-\infty}|\psi(x)|^2 dx &= |B|^2 \int^{0}_{-\infty} Be^{2\kappa x}dx + |B|^2 \int_{0}^{\infty} Be^{-2\kappa x}dx \\ &= \frac{|B|^2}{\kappa} = 1\end{align}$$
と計算できるので
$$B = \sqrt{\kappa}$$
となる。従って、波動関数は
$$\psi(x) = \sqrt{\kappa}e^{-\kappa |x|}$$
となる。
エネルギー
波動関数の導関数の境界条件(この記事の式(\(\star\)))
$$-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\left.\frac{d\psi(x)}{dx}\right|_{x=+0} – \left.\frac{d\psi(x)}{dx}\right|_{x=-0}\right) + A\psi (0) = 0\tag{\(\star\)}$$
を用いる。\(A=-V_0\)であり、波動関数を代入すると
$$-\frac{\hbar^2}{2m} \left\{-\sqrt{\kappa}\kappa -\sqrt{\kappa}\kappa\right\}-V_0\sqrt{\kappa}=0$$
$$\kappa = \frac{mV_0}{\hbar^2}$$
が得られる。これと\(\kappa = \frac{\sqrt{-2mE}}{\hbar}\)を比較して
$$\frac{mV_0}{\hbar^2} = \frac{\sqrt{-2mE}}{\hbar}$$
$$E = -\frac{mV_0^2}{2\hbar^2} < 0$$
となる。
まとめ
- 波動関数
$$\psi (x) = \sqrt{\frac{mV_0}{\hbar^2}}e^{-\kappa |x|}$$
- エネルギー
$$E = -\frac{mV_0^2}{2\hbar^2} < 0$$
コメント